相続税の土地評価~倍率地域の評価は簡単だと思いこんでいませんか?

税理士先生とお話しているとこんな言葉を聞くことがよくあります。

「ああ、倍率地域ね、固定資産税評価額に該当地域の評価倍率を掛ければいいんでしょ。カンタンカンタン。」

「倍率地域だけだったら、カンタンなんだけどな。」

一方、税理士向けの研修会の講師で相続税評価に精通されている不動産鑑定士によれば、

「路線価地域よりも、倍率地域の評価の方が難しい」

のだそうです。

☞ 倍率地域の宅地評価の落とし穴~相続税評価と固定資産税評価の評価単位の相違点について

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実は倍率地域の評価は奥が深い

倍率地域の農地=倍率評価 とは限らない

倍率地域にある農地を農地のまま贈与(所有権移転)するのであれば、その農地の固定資産税評価額に、該当地域の財産評価基準書の評価倍率を掛ければそれが評価額となります。

ただ、農地の所有権移転に併せて宅地に転用する場合には評価方法が異なってきます。

例えば親の農地を、サラリーマンの息子が自宅を新築するというので贈与してあげるようなケース。

宅地転用と同時に所有権を移転しますと農業委員会に届け出ると思います。

この場合息子が贈与を受けたのは、

農地・・・× ではなく

農地法上の農地ではなくなった造成されていない土地・・・○ ということになります。

したがって、市街地農地の評価方法により評価額を計算しなければなりません。

評価しかたはつぎのいずれか低い方ということになります。

  1. その土地が宅地とした場合の評価額(宅地並評価) - 財産評価基準書に定める造成費
  2. 倍率評価した価額

となりますので、一概には言えませんが造成費が過大にならない限り倍率評価よりも高額になる可能性が高いのです。

倍率地域の宅地 郊外型店舗の駐車場 ~ そのままでは不合理

「農地なら、そういう場合もあるかも知れないが、宅地でそんなことはないだろう。」

「倍率地域の宅地だったら、そのまま倍率を掛けるだけだろう。」

とお考えかも知れませんが、宅地でも倍率を掛けるだけだと不合理な場合があります。

例えば、郊外型店舗の駐車場用地です。

幹線道路沿いに多く見られる郊外型大型店舗。

その敷地すべてが同一の所有者のものということは稀で、多くの場合複数の所有者が事業用の定期借地権契約で事業者に貸付けられています。

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AとBのような場合なら、固定資産税の宅地の評価単価が同一というのは理解できますが、CとDではどうでしょうか。

Cは道路沿いであり、道路に面していないDよりも当然に評価単価が高いと考えるのが自然です。

ところが、固定資産税評価の画地の認定は、原則として一画地は、一筆の宅地としながら、例外的に二筆以上の宅地について、一体をなしている場合は一体をなしている宅地ごとに一画地とするとされており、郊外型店舗用地のように一体的に利用されている場合には、評価単価が同一の場合があるのです。

相続税の評価倍率は、宅地の場合道路沿いでもそうでなくても同一の場合がほとんどです。

ということは、相続税評価額が道路沿いでも、無道路地でも同じ単価で課税されるという結果になっている場合が多いということです。

☞ 倍率地域の落とし穴

まとめ

一概に倍率地域といっても、意外と注意すべきことが多いことがご理解いただけたと思います。

人間と同じく、土地も場所により個性があり千差万別で「全く同じ土地」は存在しません。

うちの土地はこんな状況なんだけど、いったいどのような評価になるのか。
そんなお悩みがございましたら、ぜひ一度ご相談ください。

正確な評価額の把握が、よりよい相続対策につながります。

※参考

総務省の固定資産評価基準(昭和38年自治省告示第158号)

基本:一画地は、一筆の宅地による。

例外:二筆以上の宅地について、一体をなしている場合は一体をなしている宅地ごとに一画地とする。

【相続税専門】岡田隆行税理士事務所 ℡087-816-8889

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