さらに10%減できるかも?利用価値が著しく低下している宅地 ~ 適用範囲の境界線

課税実務上の取扱いである「利用価値が著しく低下している宅地の評価」で、10%の評価減ができるか否かの境界線はどこにあるのか。考えて見たいと思います。

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次のようにその利用価値が付近にある他の宅地の利用状況からみて、著しく低下していると認められるものの価額は、その宅地について利用価値が低下していないものとして評価した場合の価額から、利用価値が低下していると認められる部分の面積に対応する価額に10パーセントを乗じて計算した金額を控除した価額によって評価することができます。
1  道路より高い位置にある宅地または低い位置にある宅地で、その付近にある宅地に比べて著しく高低差のあるもの
2  地盤に甚だしい凹凸のある宅地
3  震動の甚だしい宅地
4  1から3までの宅地以外の宅地で、騒音、日照阻害(建築基準法第56条の2に定める日影時間を超える時間の日照阻害のあるものとします。)、臭気、忌み等により、その取引金額に影響を受けると認められるもの
 また、宅地比準方式によって評価する農地または山林について、その農地または山林を宅地に転用する場合において、造成費用を投下してもなお宅地としての利用価値が付近にある他の宅地の利用状況からみて著しく低下していると認められる部分を有するものについても同様です。
 ただし、路線価、固定資産税評価額または倍率が、利用価値の著しく低下している状況を考慮して付されている場合にはしんしゃくしません。

国税庁タックスアンサー№4617より

岡田隆行税理士事務所 主な業務内容


通達上の通常の評価ではカバーしきれない場合の救済措置

この評価方法は、財産評価通達には記載されていません。
財産評価通達では国税庁のQ&A、資産税質疑応答事例集などで公開されているものです。

この取扱いに該当する土地について、一律に10%減額というのも
大雑把な印象は否めませんが、財産評価通達では網羅しきれない減額要素があって
対応しきれない場合の救済措置的な位置づけのものと思われます。

事例検討 利用価値が低下していると認められるか

これは実際にあった事例ですが、図1~図4の状況において、B地は利用価値が著しく低下していると言えるでしょうか。

適用対象の可否とは関係しませんが、B地は古い平屋の二戸一の元貸家が数棟建っている宅地です。平成16年の台風で河川の増水により貸家は浸水し使えなくなったまま放置されており、現在は未利用の状況です。

周囲の状況としては、甲地~丁地、道路敷き、A地~D地の順にやや土地が低くなっていって、A地~D地の背後は幅員約4mの河川となっています。

  • 甲地~丁地、A地~D地共に路線価(50E)は同一である
  • B地は道路敷きから河川に向かって、傾斜のついた進入路がありその脇に旧い貸家(現在は空家)が数棟建っている
  • B地のみに河川側に1メートル程度堤防が築造されいる。
  • A地・C地・D地については、概ねB地の堤防の高さまで土盛りがされている。
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B地については、他の土地よりも最大1mの高低差があるといえます。
質疑応答事例の文言に従えば、1mが”著しく”にあたるのかどうかが問題になります。

B地の納税者の立場に立ってみればB地が、A地C地と同じ評価額となり、同じ単価で課税されるとなると不公平感を持つこと明らかです。

逆に自分が土地を買う立場になれば、A地、C地とB地が同じ単価で売りに出されていれば、B地を選ぶ人は皆無でしょう。

このB地のように、評価対象地のみが付近の土地の状況よりも劣悪な状況である場合には適用が認めれられる可能性はあります。

ただ、相続税や贈与税が申告納税方式である関係上、課税庁側から指摘を受けなかったことをもって即、適用が認められる事例にはならないということは念頭に置いておく必要があります。
いわゆるグレーゾーンで、ちょっと怪しいけどあえて指摘をするほどのものでないから事案が省略(スルー)されているのかも知れないということです。

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利用価値が低下していると認められないケース

  1. 道路より”少し”高い位置にある 
  2. ひな段式開発の住宅造成地
  3. 路線価等の評価額に価値低下要因が織り込み済み


1.道路よりも”少し”高いくらいのほうが、土地の価値は高くなる傾向があるようです。
日当たりとか、眺望、水はけの関係もあることでしょう。
高くなることはあっても、減額要因にはならないということですね。

2.ひな壇式開発とは、もともとは山地を切り開き、開発造成した一団の造成地のことで、その開発地全体が段々、階段状、ひな壇にお雛様が並ぶが如くに家屋が並んでいる造成地のことです。
このような開発地の場合は、付設される路線価自体にそういった状況が織り込み済みであることから、減額要因にはなりません。

では、図5の場合はどうでしょうか。

甲地と乙地は地図で見ると、一見同じ路線沿いの状況類似の土地のように見えます。
実際は乙地は著しく低い土地であり、甲地と同一単価で評価するのは余りにも不合理と言わざるをえません。
こうした場合の乙地については、適用可能と判断されることでしょう。

このケースで、路線価が甲側に高く、乙側に低い路線価が二重に付設されている場合には、路線価に利用価値が著しく低下している状況が織り込み済みであると認められることから適用は不可と判断されるものと思われます。

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それでは、図6の場合はどうでしょうか。

道路敷きからは低い位置にあるものの、甲地、乙地ともに土地の高さは同一となっています。
したがって、相続税評価が同一になっても不公平が生じることはありませんので、適用対象にはならないということですね。

まとめ

評価対象地”だけ”が周囲の状況に比べて、著しく不都合な状況にある場合には適用できる可能性があります。

ただこの”著しく”の範囲が明確でないことから、適用の際には特に留意する必要があります。

※記事の内容は更新日現在の法令にもとづいて作成しています。実際の申告書作成等に際して、特例適用等についてはよくよくご確認、ご検討をお願いいたします。


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