かんぽ生命保険の「お知らせ」には要注意 生命保険金非課税枠対象かの判断


被相続人が契約者(保険料負担者)であり、被保険者だった生命保険契約の死亡生命保険金については、民法上の相続財産ではなく相続人など受取人固有の財産となります。

受取人自身の財産ですから相続財産ではないのですが、相続税法で相続財産と”みなす”規定により、一定の非課税枠を超えた部分については相続税の課税対象となります。

☞ 生命保険金の課税関係まとめ 契約者、被保険者、受取人による課税関係をケース別に整理

生命保険の非課税枠の対象となるかどうかで相続税の課税価格は大きく変化します。=非課税枠の対象となるかどうかの判断は非常に重要なポイント

注意喚起の意味で誤りやすい実例をご紹介します。

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かんぽ生命保険のお知らせ(実例)

相続税の申告書作成の依頼があったお客様から、生命保険金受取りの資料の提供がありました。

かんぽ生命保険の終身保険契約で契約内容はつぎのとおりです。

保険種類かんぽ生命保険“普通終身保険(定額型)”
保険料負担者被相続人
契約者被相続人
死亡保険金受取人相続人

そして、申告書作成の資料として 同じ契約番号のかんぽ生命保険“普通終身保険(定額型)” の次の内容の3通の「お知らせ」ハガキが提示されました。

(お知らせ その1)

××年9月6日作成【保険金額等】支払内容のお知らせ
支払事由 死亡
支払金額 3,018,803円
振込日××年8月22日


(お知らせ その2)

××年9月6日作成【保険金額等】支払内容のお知らせ
支払事由 死亡
支払金額 1,245,000円
振込日××年8月29日


(お知らせ その3)

××年9月6日作成【保険金等】振込内容のお知らせ
支払理由 特約還付金
支払金額 1,245,204円
振込日××年8月29日

※支払金額のうち204円は遅延利息である旨の表示あり


この3通のお知らせを見た際に私は当初、(その1)と(その2)については、死亡を保険事故とする死亡生命保険金の支払いなので、生命保険金の非課税枠の対象となる相続税のみなし財産と判断しました。


(その3)については、特約還付金なので本来の相続財産として、そのまま本来の相続財産として課税対象になると判断しました。

実際の振込額

ところが、実際の振込額はつぎのとおりでした。


××年8月22日の振込額 3,018,803円
××年8月22日の振込額 1,245,204円

つまり(その2)の1,245,000円については、特約のための積立金である特約還付金部分だったということになります。


この特約還付金部分を含めず、非課税対象となる死亡生命保険の金額が、非課税枠(500万円×法定相続人の数)を超える場合であれば、特約還付金部分は課税対象となるので問題は生じません。

ただ(その2)を死亡原因による生命保険金の支払いと認識して、非課税枠を適用してしまうと非課税枠の誤った適用となってしまいます。

たとえばお客様からの資料提供が(その1)と(その2)だけだったとしたらどうでしょうか。

(その2)について特約還付金であるとは判断せずに、死亡保険金と誤認して非課税枠を適用していたと推測されます。

留意すべき点

保険契約記号番号が同一であることから、同じ契約で2回死亡保険金の支払いがあるのは不自然と気がついて、実際の保険金の振込額を確認すればよいことではありますが、誤認しないように注意が必要です。

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【相続税専門】税理士 岡田隆行

国税局・税務署での32年間の資産税(相続税・贈与税)事務の経験を活かし、相続税に関する困りごとの解消に尽力します。

事務所は高松市国分寺町、趣味は料理とバイクです。