「相続税の申告等についてのご案内・お知らせ」が税務署から届いた際の対応方法ポイントを解説
ご親族が亡くなった後おおむね6ヶ月をすぎた頃に亡くなった方のご住所の所轄の税務署長、もしくは国税局長から
「相続税の申告等についてのご案内」「相続税についてのお知らせ」と銘打った文書が届くことがあります。
この記事では、これらの文書がどのような方に届くのか、また、届いた時の対応方法などについて書かれています。
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Table of Contents
「相続税の申告等についてのご案内」が届いたら
どんな方に「相続税の申告等についてのご案内」は届くのか
市区町村からの情報と税務署の蓄積情報から選ばれる
下の「市区町村から税務署へ通知される情報」に列挙してある市区町村からの情報と、生命保険金などの法律で、保険金の支払い情報の報告が義務付けられているものから得られる情報、さらに税務署でずっと収集して蓄積されている資産保有の資料などをもとに選ばれます。
申告期限内に「相続税の申告等についてのご案内」を発送する段階において、税務署では亡くなった方の正確な法定相続人の数を把握していません。正確な法定相続人を確認するためには、被相続人の全ての戸籍謄本の収集が不可欠ですが、亡くなった方すべてについてその事務をすることはできないからです。
また、亡くなった方の現金預貯金などの金融資産についても、個別に調べなければ分からない財産ですから、同様に把握できていません。
つまり、税務署としては事務処理の合理性から、不動産の評価額、または死亡生命保険金の額が一定額(たとえば5,000万円)以上であれば、他の金融資産と合算すれば相続税の対象になると見込んで、「ご案内」の対象にされます。したがって「ご案内」が届いたから、必ず相続税の対象となると決まっているわけではありません。
市区町村には税務署へ死亡届の連絡義務がある
親族が亡くなった場合、住所地の市区町村役場へ死亡届を提出しなければなりません。
死亡届を受取った市区町村役場は、その方が亡くなったことと一定の情報を所轄の税務署へ通知しなければなりません。相続税法でそのようなきまりになっているのです。
市区町村から税務署へ通知される情報
市区町村役場から所轄の税務署へ通知される情報はおおむね以下のとおりです。
- 亡くなった方の住所、氏名、生年月日、死亡日
- 死亡届を提出した親族の住所、氏名
- 亡くなった方の(その市区町村内に)保有する不動産
- 亡くなった方の住民税の課税状況
- 法定相続人の情報
市区町村にもよりますが、この段階で、すべての法定相続人情報を調べている訳ではありません。
亡くなった方のすべての法定相続人を明らかにするためには、その方の生まれてから死ぬまでのすべての戸籍を収集する必要があります。その作業は手間がかかり、市区町村から税務署への連絡項目としてそこまでは求められていません。
死亡届出書を提出した方が、亡くなった方の妻であれば、その妻だけ記入されている場合もあります。
同封されている「申告要否検討表」の提出義務はあるのか
提出は「義務」ではない
「相続税の申告書」を提出するのであれば、「申告要否検討表」を提出する必要はありません。
「申告要否検討表」は「相続税の申告書」の提出義務がない方(財産の額が基礎控除以下)が、「うちの相続はこれこれこういった内容だから相続税の申告書の提出義務はありませんよ」という意思表示を税務署にするための書面です。
「申告要否検討表」は申告書のように法的な提出義務はありませんので、提出しなくてもそれによるペナルティはありません。
税務署がその回答内容によって相続税の申告書提出が必要かどうか確認する資料となります。
いい加減な内容を書いて提出してしまうと、あとで問題になる可能性がある
「うちは相続税なんてかからない」という思い込みから、「申告要否検討表」をいい加減に書いて提出すると後々問題になることがあります。たとえば亡くなった方が取引していた金融機関の一部を書き忘れて提出していた場合などです。
相続税の課税対象にならなければ、何の問題もないのですが、土地の評価額の見込誤りで相続税がかかってしまうようなことがあります。
そのまま申告書を提出しないでいた場合、申告期限後になってから税務署から税務調査の連絡があるかも知れません。
その際に、事前に提出していた「申告要否検討表」の記載内容を指摘されて
「預金先の金融機関をすべて書かれていませんね。これは相続財産が基礎控除以下になるように意図的に書かなかったのではないですか?」
・・などと、税務署からあらぬ疑いを掛けられてしまいかねないので、提出する際にはご注意ください。
相続税の対象になるか試算してみる
相続税の対象になるかどうか、簡単に試算してみましょう。☞ 相続税がかかるか試算
書面の右上の「名簿番号」の意味
管轄の各税務署での相続税の管理簿の番号です。
この名簿番号が振られているということは、「要処理」の区分がされた案件ということですので、税務署としては何らかの処理をしなければなりません。
申告書が提出されるのかされないのか、提出されないのであれば、相続税がかかるのかかからないのか判断して、かかるなら課税処理を、かからないなら省略処理をする必要があるということです。
判断しないままに放置してしまうと「長期未処理事案」となって処理懈怠と指摘されますので、税務署としてはできるだけ早く、手間をかけずに処理の判断をしたいのです。
相続税がかからないのに、どうしてこんな「検討表」なんて出さなきゃいけないんだといって放置せず、早めに(できるだけ正確なものを)提出したほうが、税務署から再度「ご案内」などの通知がされることを防げます。
また、申告期限後になると「ご案内」ではなく「税務調査」という手続きを取られる恐れがあり、そうなると調査の結果、相続税がかからなかったとしても税務署との対応に時間と労力をとられることになってしまいます。
どうしてもっと早く送ってくれないのか
相続税のご案内・お知らせをもっと早く送れないのか、よくあるご質問です。
理由のひとつは、事務処理的なことです。市区町村役場の死亡届出の受理、必要な作業を経て、税務署へ連絡があるのが亡くなってからおおむね2カ月後です。
それから税務署での選定作業をしていたら、おおむね6か月後になってしまいます。
今ひとつは、ご親族が亡くなられてから間を置かずに、税金の申告勧奨の通知を届けるのは、遺族感情を想えばいかがなものかという配慮からという面もあります。
対応方法
「相続税の申告等についてのご案内」が届いた後のながれはつぎのとおりです。
上述のとおり、「ご案内」が届いたからといって、相続税が必ず課税されると決まったわけではありません。
落ちついて、相続税の基礎控除を超えるのかどうか、その見極めが肝要となります。
まとめ
「相続税の申告等についてのご案内」など税務署から連絡が来るのは、相続が開始してからおおむね6カ月を過ぎた頃です。
相続税の申告期限は、相続開始の日から10ヶ月以内ですので、「ご案内」が届いた頃には残された時間は、あと3ヶ月から4ヶ月です。
相続税の申告書の作成は、財産の内容にもよりますが、相続財産の基礎資料を揃えることに相当の時間を要します。
「相続税の申告等についてのご案内」が届いたら、放置せず早急に対応されることをおすすめします。
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