うちは農地ばかりだから相続税はかからない?相続登記した後で後悔
当ブログをご覧いただきありがとうございます。相続専門の税理士の岡田隆行(https//okatakatax.com)です。
「うちのお父さんが持っている土地は、田んぼや畑ばかりで、市役所の固定資産税の評価も安いから相続税の対象にならないでしょ。」と、安易にお考えではありませんか?
「農地だからと安易に考えていると、農地の所在場所によっては、思いのほか高額な評価額になる可能性がありますのでご注意ください。」といった内容の記事です。
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農地の相続税評価額=固定資産税評価額ではない
(これは事例です)先日、申告期限が過ぎている相続税申告書の作成依頼がありました。相続人代表のご長男のお話はつぎのとおりです。
父は昨年の2月に亡くなり、相続人は母と私と妹の3人です。
父が持っていた土地は、住まいの土地、家屋、それに田畑です。田畑は住んでいる市内点在しています。
法定相続人は3人ですので、相続税の基礎控除は4800万円(3000万円+相続人数×600万円)というのは知っていました。
しかし、市役所の固定資産税の評価額をみると、4800万円もなかったので、うちは相続税の対象にはならないだろうと考えていました。
ですので、相続登記を依頼した司法書士のすすめもあって、父が持っていた全ての土地について、昨年中に私の名義に相続登記を済ませています。
申告期限からもう半年も過ぎた頃に、国税局の事務センターからA4の通知書が届きました。
それに驚いて税理士先生に連絡した次第です。
農地でも宅地並みベースの評価がされる地域がある
おはなしを伺ってから、農地の所在の確認をしたところ、うち5箇所の農地が「都市計画法上の地域地区が用途地域内」にあることが分かりました。
農地が所在する市は区域区分のない(市街化区域/市街化調整区域の区分がされていない)「非線引き都市計画区域」の市でした。(ちなみに香川県では現在は市街化区域/市街化調整区域の区域区分がされている市は存在しません。)
非線引きの都市計画区域を定めている市の地域地区が用途地域内にある農地については、相続税の財産評価の区分上「市街地周辺農地」として、評価対象のその農地が仮に宅地だったらいくらの評価額になるか、をまず算定します。その宅地並みの評価額から、造成費相当額を差引いた額から、さらに20%減額した額が相続税の評価額となります。
これは、高松市の令和5年分の評価倍率表の抜粋です。「一宮町」の最初の地域区分が「都市計画法上の用途地域の定められている地域」とされています。そして、田畑の欄には「周比準」という表示がされています。
農地の相続税評価の区分
農地の評価はつぎの区分に分類されます。
- 市街地農地
- 市街地周辺農地
- 純農地(農用地区域内)
- 純農地(農用地区域外)
市街地農地
都市計画法上の市街化区域内にある農地です。評価する農地が仮に宅地だとした場合の評価額(宅地並みの評価額)を基準に、その農地に応じた造成費の額を差引いた額が評価額となります。
注意点としては、評価対象の土地が市街化区域内ではなくても、農地法の転用許可を受けた農地(許可済み農地)の場合には、この評価方法を用いなくてはなりません。見た目は農地のままなのですが、農地法の網から抜け出しているため、この評価方法がとられます。(固定資産税の課税台帳や通知書には「介在田」「介在畑」という表記がされていることがあります。)
転用許可済みの農地か否か不明な場合には、該当市の農業委員会(担当課、農林水産課であることが多い)に問い合わせる必要があります。固定資産税の評価額も上昇し、税負担も増えますから、たいていは、転用許可済みであれば、不動産登記を宅地に変更していることが多いようです。
宅地並みの評価額 - 造成費相当額 = 評価額
評価対象地が市街化区域に所在するかどうかは、評価する土地の市区町村で「都市計画図」を確認します。最近は各市区町村のホームページで公開されている場合が多いです。
市街地周辺農地
都市計画法上の市街化区域内にある農地です。評価する農地が仮に宅地だとした場合の評価額(宅地並みの評価額)を基準に、その農地に応じた造成費の額を差引いた額からさらに20パーセントを減額した額が評価額となります。
注意点としては、評価対象の土地が用途地域内であっても、農地法の転用許可を受けた農地(許可済み農地)の場合には、上記の市街地農地の評価方法を用いなくてはなりません。
(宅地並みの評価額 - 造成費相当額 )× 80% = 評価額
純農地(農業振興地域の農用地区域内・農用地区域外)
固定資産税の評価額に評価倍率を乗じて評価します。
固定資産税の評価額 × 倍率表の評価倍率 = 評価額
相続登記をすませた後、やり直した場合
(ご注意ください)その他の留意点
いちど相続人のおひとりに相続登記で名義変更を済ませた場合、相続税が多額になるからという理由で、他の相続人に相続登記をしなおした場合はどうなるのでしょうか。
⇒ 遺産の再分割は、最初の相続人から新たな相続人への贈与と認定され、贈与税が課される可能性があります。
※記事の内容は更新日現在の法令にもとづいて作成しています。実際の申告書作成等にあたっての、特例適用などにつきましてはよくよくご確認、ご検討をお願いいたします。
【相続税専門】岡田隆行税理士事務所 ℡087-816-8889
国税局・税務署での32年間の資産税事務経験を活かして、相続税に関するサポートに尽力します。
事務所は高松市国分寺町、趣味は料理とバイクです。