賃貸アパートを贈与する際のローン残と敷金により評価額が変化~負担付き贈与について
負担付き贈与と聞くと、賃貸アパートの建築代金ローンが残っている物件を子供などに贈与して、ついでにローンも引き継がせるという場合がまず頭に浮かぶと思いますが、もちろんローン残が零の場合もあります。
この記事は受贈者(物件を受取る側)が、物件の贈与にあわせて負担も引き受けるかどうかで評価方法が変わるという内容です。
受贈者 | 対象物件の評価方法 |
●ローン残を引継ぐ ●敷金に相当する金銭を引継がない | 時価評価 |
〇受贈者はローンを引継がない 〇敷金に相当する金銭を引継ぐ | 相続税評価 |
受贈者に負担させるケース=時価評価
【事 例】
父親の甲が所有する賃貸アパートを、長男の乙に贈与します。賃貸アパートのローン残も甲から乙へ引き継ぎます。
そうなりますと、贈与を受けた人(受贈者)は賃貸物件の贈与は受けるものの、同時にローンの残額という負担を負わなければならなくなります。この場合には「負担付贈与通達」の対象とされることからアパートは「相続税評価額」ではなく「時価」で評価することとなります。
また、贈与者についても、譲渡所得※が発生する場合には所得税の申告が必要となります。
※譲渡所得=(贈与時の時価)ー(アパートの取得価額ー減価償却費)
実質的に負担させないケース=相続税評価
つぎに、預かり敷金の扱いにより取り扱いが変化することについてご注意という内容で書いています。
【事 例】
父親の甲が所有する賃貸アパートを、長男の乙に贈与します。それにあわせて、預かり敷金・保証金等と同額の金銭を受贈者に交付する。
下線部分の記述により、贈与者は受贈者に対して敷金・保証金の負担は負わせないとの意思があることが分かります。
したがって負担付き贈与通達の適用はなく、賃貸物件建物のみを受贈したものとして、当該物件を相続税評価額により評価して、贈与税の申告書を提出しておけばよいということになります。
なお、賃貸物件と同時に甲から乙へ交付される敷金・保証金と同額の金銭については単なる預かり金の移管なので、贈与したことにはなりません。したがって贈与税の申告財産に含める必要はありません。
国税庁HP:賃貸アパートの贈与に係る負担付贈与通達の適用関係
【相続税専門】岡田隆行税理士事務所 ℡087-816-8889
国税局・税務署での32年間の資産税事務経験を活かして、相続税に関するサポートに尽力します。
事務所は高松市国分寺町、趣味は料理とバイクです。