住民票さえ移しておけばOK?~小規模宅地等の特例

〇住民票上同居していても、実態がなければ特例は使えません。(実質課税の原則)

相談者N越氏
「先生、小規模宅地の特例について聞きたいんだけど。」

税理士O
「はいどうぞ。」


小規模宅地の特例とは?
相続人のどなたが取得するかによりますが、亡くなった方が、お住まいだった土地や、事業をしていた土地などの一定面積までの評価額を、5割から8割引きにしましょうという特例です。


相談者N越氏
「うちは夫婦二人住まいで、一人娘は独身でね、県外で借家住まいをしてるんだよ。
もう娘もあと5、6年で定年なんで、定年になったらこっちに帰らせて、同居しようと思っているんだ。」

税理士O
「それは良い事ですね。」

相談者N越氏
「それでね、自宅はその娘に相続させたいと考えているんだけど、もし今のままだと別居だから娘は小規模宅地の特例が使えないじゃない。」

税理士O
「そうですね。お嬢さんと同居する前にN越さんが亡くなられた場合、特例を使えるのは奥様だけですね。」

相談者N越氏
「そうそう。だから今のうちに娘の住民票をこっちに移しておこうかと思っているんだけど。
そのうち同居する訳だし。そうすりゃ小規模宅地の特例も使えるんでしょ?」

税理士O
「N越さん、お気持ちは分かりますが、実際に同居していなければ、特例は使えません。
形だけというのは通らないんです。」

相談者N越氏
「税務署は、本当に娘が同居していたかどうかなんて調べることができるの?」

税理士O
「万が一、税務調査の対象にされた場合、徹底的に調べられます。
まず相続人の職業、勤務先は市役所へ問合せすればすぐに分かります。
あれ?この娘さん住民票はこっちなのに、勤務先が県外だな、おかしいぞ。
ということで、厳しく追及されるでしょう。
それに、お嬢さんがお住いの借家についても調べられます。
転居しているのに、家を借りたまんまだし、水道や電気の使用量が変わっていない。
これはどういうことですかと説明を求められます。」

相談者N越氏
「そこまで調べられるんだ。えげつないなあ。」

税理士O
「その上、”住んでいないのに住んでいるように見せかけ、その行為の結果として国税を免れた”と認定されてしまった場合、税務職員隠語で言うところの重たいやつ(重加算税)をかけられる可能性はとても大きいですね。
税務調査は、特に相続税の調査は相続人の方が調査に不慣れなこともあって、受ける側にとっては大きな負担となります。合法的な対策を練っていきましょう。」

相談者N越氏
「よく分かりました。ありがとうございます。」