株式保有特定会社からの脱出~非上場株式(同族株式)の評価

非上場の会社の株式は”取引相場”というものが存在しません。

でも、非上場株式を持っている人の相続が発生した場合には、その株式にどれだけの価値があるのかを金銭に換算しなければ、相続税の計算ができません。

そこで、国税庁長官は各国税局長に「財産評価基本通達」を発して、その中で「取引相場のない株式の評価方法」を定めています。これを使って株価を数値化する訳です。

☞ 非上場株式の評価~株価が高いと思い込んでいませんか

今回は特殊事情のある会社(特定の評価会社)の評価、その中でも「株式保有特定会社」について考えて見ます。

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1 非上場の会社の評価の方法

評価の方式は3つあります。
その1 配当還元方式 (配当)
その2 類似業種比準方式 (類似)
その3 純資産価額方式 (純資産)

その1(配当)は、その会社の支配権がない株主のための評価方式です。 

その2(類似)その3(純資産)は、その会社を支配することができる株数を保有する株主のための評価方式です。

この場合はその対象となる会社の「資産の額」「年間売上額」「従業員の数」により次のパターンに分けて評価します。

  1. (類似)だけで評価
  2. (類似)と(純資産)を混ぜて評価
  3. (純資産)だけで評価

一般的に(純資産)は評価額が高く、(類似)は低く算出されます。
したがって、相続・贈与の場合にはみなさん(類似)に持っていきたいのが本音な訳です。

法令に反しない範囲でいかにして評価額を低くできるか、当局とのいたちごっこがあり、評価の方法については種々変遷してきました。

2 株式保有特定会社

特殊事情のある会社(特定の評価会社)とは、次の状況にある会社を指します。

  1. 比準要素1の会社
  2. 株式保有特定会社
  3. 土地保有特定会社
  4. 開業後3年未満の会社
  5. 開業前又は休業中の会社
  6. 精算中の会社

これらの特殊事情のある会社については、上記1の原則的な評価方法によって画一的に評価してしまうと、その会社の実情に合わない結果となり、課税の公平が保てないという理由で特別扱いされている訳です。

実情に合わないとは、どういうことでしょうか。

具体的には類似業種比準価額の標本となる上場会社には、特殊事情がある会社は除外されているので類似業種比準方式を用いることは不適切ということです。

この特殊事情のある会社のうち、今回は2.株式保有特定会社について考えて見ます。

株式保有特定会社とは

会社の総資産に占める「株式等」の割合が50パーセント以上の会社を指します。

?「株式等」とはどこまでを指しますか?

株式、出資、新株予約権付社債のことを指します。「出資」は法人に対する出資をいい、民法上の組合等に対する出資は含みません。

株式保有特定会社になると

純資産方式か、「S1+S2」方式いずれか低いほうの評価となります。

?「S1+S2」方式って何ですか?

会社の資産を株式等の部分(S2)とそれ以外の部分(S1)とに分離して評価する方法です。

S1=会社の資産の内株式等以外の部分 →上記1の1.(類似)と(純資産)を混ぜて評価

S2=会社の資産の内株式等の部分 →(純資産)で評価

株式保有特定会社から脱する方法

次の資産の移動・変動が、①合理的な理由がなく、②株式保有特定会社と判定されることを免れるためのもの と当局が認定した場合にはなかったものとして評価されてしまいます。

  1. 会社が借金して現金を増やす
  2. 会社が借金して株式以外の資産を買う
  3. 会社の現金預貯金で株式以外の資産を買う

?合理的な理由の判断となる基準は?

明確な基準はなく、次のような事項について「総合勘案」して判断されるものと思われます。
つまり、こうだったら指摘を受けるという指標は存在しません。

  1. 特定会社とされないこと(租税回避行為)
  2. 取得等した資産と会社の事業との関連
  3. 資産の取得等の時期と課税時期との期間
  4. 原則的な評価方法との評価額の差額の大小
  5. 特定会社に必然性があるか

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※記事の内容は更新日現在の法令にもとづいて作成しています。実際の申告書作成等にあたっての、特例適用などに関しましてはご確認、ご検討をお願いいたします。