相続税の土地評価~(無道路地)道路のない不整形な土地のケース

道路に面しておらず、形状がいびつな土地はどのように評価すればよいのでしょうか。

一般的な土地評価の解説書には、道路のない土地の評価はこうですよ、形のいびつな土地の評価はこうですよ、と説明がありますが、道路に面しておらず、かつ、形がいびつな土地というイレギュラーなケースについて整理しておきたいと思います。

※道路とは建築基準法上の道路のことで、この道路に接していないと基本的に建物を建築することはできません。評価する土地が接している道路(道路のような土地)が、それに該当するかどうかは市区町村(又は都道府県)の建築指導課などに問い合わせる必要があります。

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岡田隆行税理士事務所 主な業務内容


不整形地によく似た「く形」の整形地(近似整形地)を求める

「く形」とは、その形をなすそれぞれの角が、直角で構成された形のことです。
①のようないびつな形状の土地を、直線と直角で囲んで①と同じ地積の①’の形状を作ります。

①が評価対象の不整形地で、①’を近似整形地と言います。

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この近似整形地は、正方形または長方形であることが理想ですが、①’図のように階段状でも、台形や平行四辺形でも問題はありません。

奥行価格補正後の価額を求める

奥行価格補正は、たとえば普通住宅地区であれば普通住宅地区の道路に直接面している画地の奥行距離を前提としています。

ですので、いわゆる旗竿地や、事例のような道路から奥まった場所にある土地にそのまま適用すると、もともとその地域のものとして設定された値との間にずれが生じることになります。

そこで、こうした無道路地の奥行価格補正の補正率の適用にあたっては、調整計算を行う必要があります。

具体的には、つぎの方法で求めた額が、奥行価格補正後の評価額単価となります。

  1. ①’と②を合わせた整形地全体の評価額を求める。
  2. ②の土地の評価額を求める。
  3. ①’+②の評価額から②の評価額を差引いた額を①’の地積で除する。
  1. 50,000円路線価 × 1.00奥行価格補正率 × 210㎡総地積 = 10,500,000円
  2. 50,000円路線価 × 1.00奥行価格補正率 × 82㎡②地積 = 4,100,000円
  3. (10,500,000円 - 4,100,000) ÷ 128㎡ = 50,000円

※ ②前面宅地の奥行価格補正率は、奥行を8.2m(地積÷間口=8.2m<10m=実際の奥行距離)と認識するため、本来は0.97となりますが、前面宅地の奥行が短いことで1.00未満の補正をすると不合理が生じますので、この場合の奥行価格補正率は1.00を用います。

不整形地補正を行う

不整形地補正率は、3図のとおり、路線から評価対象地全体を包み込む形状の長方形を想定した想定整形地をもとに求めます。

例示図からもおわかりのように、近似整形地と想定整形地は必ずしも一致するものではありません。

3図の点線の長方形のことを想定整形地と言います。

想定整形地のうち、①の不整形地以外の部分を”かげ地”といい、想定整形地に占めるかげ地の割合をかげ地割合と言います。

かげ地割合 210㎡ - 128㎡ / 210㎡ = 39.04% → 不整形地補正率 0.88

このかげ地割合が高いほうが、土地のいびつ度が高いということになりますから、不整形補正率の減額割合も高くなる結果となります。

不整形地としての補正は、以下のいずれか有利なほうを選択できます。1.の 0.79 を選択します。

  1. 0.88不整形地補正率 × 0.90間口狭小補正率(普通住宅地区で間口が4m未満の場合0.90)=0.79(2位未満切捨て)
  2. 0.90間口狭小補正 × 0.90奥行長大補正率 =0.81

ただし、不整形地の形状や道路との接し方の状況によっては杓子定規に不整形補正率をあてはめると評価結果が不合理になることがあり、ケースバイケースでその適用を判断する必要があります。

また、不整形地補正率の適用には下限が設定されており、その限度は0.60です。

無道路としてのしんしゃくを行う

無道路地としてのしんしゃくは、利用する道路から評価対象地まで進入路を新たに開設するものと想定した場合の開設費用分を算定して行います。

具体的な計算式は、その都道府県市町等の建築基準における接道義務が、幅員4mの道路に2m以上接している必要がある場合には次のようになります。

道路から評価対象地までの距離 7m × 2m × (接道する路線の)路線価格 @50,000円 = 無道路地としてのしんしゃくされる額 700,000円

なお、無道路地のしんしゃく割合には上限があり、最大40パーセントとなっています。

まとめ

以上の各項目の結果によって評価額を求めます。

50,000円【奥行価格補正後の価格】 × 0.79【不整形補正率】 × 128㎡【地積】 - 700,000円【無道路地のしんしゃく】 = 4,356,000円【評価額】

今回は道路に面しておらず、かつ、形がいびつな土地というイレギュラーな土地のケースの評価のながれについて整理してみました。

土地は唯一無二もので、工業製品のように全く同じ土地というものは存在しません。
それでも、やはり類型は存在しますので、その土地に即した評価額を求めるには、いろいろなケースの土地評価を経験して常に研鑽を積んでゆく他にないと私は考えています。

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※記事の内容は更新日現在の法令にもとづいて作成しています。実際の申告書作成等に際して、特例適用等についてはよくよくご確認、ご検討をお願いいたします。

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【相続税専門】税理士 岡田隆行

国税局・税務署での32年間の資産税(相続税・贈与税)事務の経験を活かし、相続税に関する困りごとの解消に尽力します。

事務所は高松市国分寺町、趣味は料理とバイクです。


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