相続税の土地評価~貸家建付地の評価~タダで借りている土地に貸家がある場合

夫婦間で土地の貸し借りがある場合、地代は支払っていないよというケースが多いと思います。

夫が持っている土地のうえに、夫婦で共有の賃貸アパートを建てました。

そして、その賃貸アパートを貸している場合、その土地の評価はどうなるのでしょうか。

関連☞ 借地権に関する記事まとめ

岡田隆行税理士事務所 主な業務内容

apartments

土地の使用貸借部分については、借家人の権利が及ぶのは建物まで

下のようなケースを考えてみます。

①夫が宅地を持っていました。

②その土地のうえに賃貸アパートを夫婦で建てました。

③夫婦は賃貸アパートを借家人さんに貸出しました。

賃貸アパートは共有で、夫が1/2、妻が1/2となっています。

妻は、夫から土地を借りている形になりますが、地代の支払いはしていません。

アパート図

このケースで夫に相続が開始しました。

土地の評価は、


土地の二分の一について貸家建付地(賃貸アパートの夫の所有部分)

土地の二分の一 について自用地(賃貸アパートの妻の所有部分)


ということになります。

通常、賃貸物件が上に建っている土地に関しては、その貸家の借家人の借家権がその土地にも及ぶという考え方から、

借家権割合 × 借地権割合 (たとえば 借家権割合30% 借地権割合50% とすると 15%)

を土地の自用地としての評価額から減額して評価します。これが貸家建付地の評価です。

ところが、土地と建物の所有者が異なり、借地人から底地を持っている人に地代が支払われていない場合(使用貸借といいます)土地借りている権利は零として扱われます。

それは、その土地を借りている人は、法律で保護される権利がきわめてよわいからということです。

この時点で、借地人の権利が土地にまで及んでいないことになります。

それは、借家人の権利が土地にまで及ばないということと同じことになります。

見た目にはまったくおなじ利用状況ではありますが、妻が夫から土地をタダで借りている(使用貸借)部分に関しては自用地価格、つまりなんらの権利がくっついていないものとして評価することとなります。

夫単独でアパートを建てて、その一部を妻に贈与した場合

上の例で、賃貸アパートの妻の持分が夫からのプレゼント(贈与)だった場合を考えてみます。

評価のしかたが変わります。

順番としてはこうです。

①夫が土地をもっていました。

②夫がその土地のうえに賃貸アパートを建てました。

③夫は賃貸アパートを借家人さんに貸出しました。

④夫は賃貸アパートの二分の一を妻にプレゼントしました。

この場合でも、土地の二分の一が貸家建付地、二分の一が自用地と評価するのでしょうか?

この場合の評価は、


土地のすべてについて貸家建付地


ということになります。

この場合、③の借家人さんが入居した時点では、賃貸アパートとその底地をもっているのは、夫なので、借家人さんの家を借りている権利によりその土地を利用する権利があります。

土地にまでその権利が及んでいるわけですね。

その状況で、その賃貸アパートが妻に贈与されるのですが、借家人さんの権利に変化はないという考え方から貸家建付地として評価することになるということです。

借家人さんが入れ替わってしまったら、自用地に戻る

アパートが全部夫のものだった時の借家人さんが、すべて入れ替わってしまったらどうなるのでしょうか?

そうなると、

①妻がだんなさんからタダで土地を借りている。

②妻名義の賃貸アパート(空室)がその上に建っている。

③その状況から借家人さんが入居してきた。

ということになりますので、上の1と同じ状況となりますから評価は1と同じ


土地の二分の一について貸家建付地(賃貸アパートの夫の所有部分)

土地の二分の一 について自用地(賃貸アパートの妻の所有部分)


ということになります。

まとめ

賃貸アパートが建っているからその土地が即、貸家建付地だねとは言えないということがご理解いただけたかと思います。

底地の貸し借りの状況によって評価のしかたが変化するって面白いですよね。

賃貸アパートが建っている土地の評価に際しては、土地の持ち主、家屋の持ち主、地代の支払いの状況、借家人さんがいつ入居したのかをよく確かめて慎重に判断していく必要があるということですね。

岡田隆行税理士事務所 主な業務内容