借地権の認識について~同族法人に係わる課税関係

社長個人所有の土地の上に、同族法人が建物を建築して、同族法人は社長に地代を払っている。
よくある話ですが、この記事では個人と同族法人に係る借地権に関する課税関係について整理しています。

借地権とは、建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権

I岡社長
「先生、今は更地で建築資材置き場として会社に貸しとるワシの土地やけど、今度会社の倉庫を建てようかと考えとるんよ。」

税理士O田
「それはいいですね。お仕事が増えて、倉庫が必要になったんですね?」

I岡社長
「そうなんよ。ありがたいことにの~。ほんで、倉庫は会社の名義で建てるんやけど、地代はそのままでええんかな?
地代は土地の値段の3パーセントぐらいなんや。
ワシにとっては、倉庫があるかないかだけの話やし。」

税理士O田
「そうですね~。建物を建てるとなると、会社の借地権の権利関係を整理しておかないといけませんね。」

I岡社長
「借地権ですか?」

税理士O田
「そうです。会社に建物を建てさせるということは、その会社がI岡社長から借地権を取得することになります。
それが無償であれば、会社はI岡社長から借地権を貰ったことになります。
なので、借地権の時価相当額の受贈益があったものとして、法人税の課税対象となります。
それから、I岡社長は会社に対して借地権を無償で渡したということで、借地権の譲渡があったとみなされて、譲渡所得の申告をしなければいけません。
さらに、借地権の分だけ会社の資産が増えますので、会社の株価が上昇します。
その分I岡社長以外の会社の株主さんは、無償で株価上昇の恩恵を被ったということで、I岡社長から贈与をしてもらったことになりますから額によっては贈与税の申告も必要になります。」

I岡社長
「えっ?そうなんですか?そんなに色々あるんな。長い事会社やっとるけどそんな話聞いたん初めてやわ。」

税理士O田
「この法人個人に対する課税が日本全国一律にされている訳ではないようですが、権利関係や、地代の額から判断するとこういった課税関係となります。
土地を借りている人が、建物を建てると借地借家法によってその借地人は保護されることになりますので、こうした権利関係にかかる課税関係が起こってくるのです。」

借地権課税をスルーする!

I岡社長
「ほんなら、地代の額とかが変わったら課税も変わるんな?」

税理士O田
「そうです、変わってきます。まずですね・・・

地価の6パーセント以上の地代を支払う。

・・・ことによって、”借地の権利が弱いから借地人は高い地代を払っている”と認識されますので、借地権課税は起こらないことになります。次に・・・

土地の無償返還の届出書を税務署に提出する。

・・・ことによって、地主のI岡社長と借地人の会社は、互いに借地権はないものという認識であると国に宣言しますという内容の届出です。
これによって、借地権課税は起こらないことになります。」

I岡社長
「そうですか!一律にイキナリ課税ということではないんやね~。良かった。
ほんで、先生その届出書の提出期限はいつまでなんですか?」

税理士O田
「それは通達で”遅滞なく”とされていますので、期限があってないようなものですね。」