相続税の債務控除~親から借金していた子が亡くなったケース
親から借金をしていた子供が、親より先に子が亡くなった場合相続税の債務控除は可能なのでしょうか?
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相続開始の際に現に存する確実な債務かどうか
相談者O方氏「先生~私、5年前に長男の事業資金として500万円貸していたんですが、その長男が先日交通事故で亡くなりました。長男は未婚でして、妻子はいません。金銭消費貸借契約書はきちんと作っています。」
O田税理士「それはお気の毒なことです。それで相続税の課税対象にはなりそうだという事でしょうか?」
相談者O方氏「そうなんです。死亡生命保険金が高額で相続税の申告が必要になるようなのです。家内は10年前に亡くなっていますので、相続人は私一人なんです。」
O田税理士「なるほど。それで相続税の申告で、ご長男への貸付金が債務控除できるものかどうかとお悩みなのですね?」
相談者O方氏「その通りです。500万円贈与してやっても良かったのですが、借金があることがモチベーションに繋がるかなと考えて貸すことにしたのですが・・・」
O田税理士「そうですか・・・お尋ねしますが、ご長男は借金の返済はきちんとされていたのでしょうか?」
相談者O方氏「いや~それがですね~事業がなかなか軌道に乗らないものですから、利息分しか受取っていなかったんです。契約書上は元金均等で毎月5万円づつ返済するという内容になっていたのですけどね。」
O田税理士「分かります。なかなか実の息子から取り立てるというのはできませんからねえ。」
ある時払いの催促なしでは難しい
O田税理士「O方さん、この辺が親子間のお金の貸し借り債務控除の難しいところでして・・・O方さんはもちろん全額返済を受けるお積りだったとは思いますが、現実には契約通りに返済を受けておられない。これは親子だから可能な事であって、銀行からの借金であればそうは行きませんよね。契約通りきっちり取られてしまう。ある時払いの催促なしでは控除は難しいかも知れません。」
相談者O方氏「いえ、催促はしていたのですよ。してはいたのですが、なにせ資金繰りが・・・」
O田税理士「今のお話を伺う限りでは、ご長男の借金が債務控除可能な債務というのは難しいかと思います。債務が確実なものかどうか判断基準ですので、もし債務控除して申告した場合、税務調査で否認される可能性は否めません。」
相談者O方氏「 では、借金ではなくて、贈与だったという事になるのでしょうか?今からでも贈与税の申告をしなくちゃいけないのでしょうか?」
O田税理士「いえ、お話からすれば、この500万円はご長男の借金だったことは間違いない。債務控除できないから、直ちにそれは贈与だということではないのですよ。ただ、相続税の債務控除の対象となる確実な債務とは言えないでしょうという事です。」
相談者O方氏「じゃあ、もし私が先に亡くなっていたらどうなるんでしょうか?長男に対する貸付金債権を私の財産として計上すべきなのかどうか。」
O田税理士「そうですね~贈与ではないから、もちろん贈与税の申告もしていませんし、貸付金債権として財産に計上するべきでしょうね。」
相談者O方氏「 債務とは認めないけど、財産には加算するという事ですか?納得できませんね~」
O田税理士「そうですよね。この借金の債務控除については、ご長男の事業の経営状況や返済の状況など事実関係をもっと詳細にお尋ねして時系列に整理したうえで、慎重に検討して債務控除するかしないか判断するようにしましょう。」
相談者O方氏「 分かりました。よろしくお願いします。」
判断は慎重に
親子間のお金の貸し借りだからと言って、それが即、親から子に対しての贈与だと決めつけることはあってはならない事だと思います。
親子間のお金の貸し借りだからこそ、考え得るあらゆる項目を洗い出して検討して、事実関係を確認して判断する必要があるということですね。
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