家族信託ってなんですか?基本・全体像・課税の考えかた
「家族信託って最近よく耳にするけど、どんなものなのかはよく分からない。」
「なんだか難しそうだし、面倒そうだ。」
わたしもそうです。ちょっと聞きかじった程度で深くはまったく知らないというのが本音です。
そこで、家族信託をわたしなりに、できるだけわかりやすく解説してみたいと思います。
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信託のはじまり
中世のヨーロッパが発祥の地で、発祥の原因は戦争です。
広大な土地を領有している地主の旦那さんがいました。
旦那さんはその土地を大勢の農夫たちに耕作させて、土地から収穫した作物の一部を地代として献上させていました。
あるとき戦争がおこり、旦那さんはじぶんの土地を守るため戦争に行くことになりました。
残される妻とこどもたちではその土地や農夫たちを管理し、まとめることができません。
さあ、困りましたね。どうしましょう。
そこで登場するのが教会です。教会と旦那さんは協定を結びます。
協会は旦那さんの土地(所有権)を預かり、そこから得られる作物(受益権)を妻やこどもたちに渡すという協定です。
これが信託のはじまりです。
信託の登場人物
委託者(いたくしゃ)託すひと・・・資産の現在の所有権者です。資産の所有者。たとえば おとうさん
受託者(じゅたくしゃ)託されるひと・・・委託者から委託者の資産を預かる人です。たとえば 長男
受益者(じゅえきしゃ)利益をもらうひと・・・資産から得られる利益を受ける権利をもっている者です。 たとえば おとうさん
たとえば、賃貸アパートオーナーのおとうさんが認知症になったときのために、長男と信託契約を交わしました。
《委託者・・・おとうさん、受託者・・・長男、受益者・・・おとうさん》となります。
信託の基本
信託のキモは次のことに集約できます。
所有権を、所有部分と権利部分に分離すること
民法上の所有権は対象となるもの、たとえば土地を所有することによって、そこから得られる利益を享受できる権利です。
この所有部分と権利部分とを分けてしまおうという考えが信託です。
つまり所有部分を受託者が、受益権部分を受益者がそれぞれ分けて持つということです。
信託はシンプル・信託の問題はこれで99パーセント解決できる
「信託は難解だ」という思い込みが、信託という制度の浸透を妨げている面があるようです。
信託はつぎのことを念頭に考えれば、ほとんどの問題が解決します。
取引法上どうなるか?税務上どうなるか?整理して考えるのがキモ
①取引法上、所有権は受託者に移転する。
②税務上、受益者は所有者とみなされる。
【事例1】父親名義の賃貸不動産を子に委託し、賃貸不動産からの利益は父親がうけとる場合。
関係性・・・委託者・受益者=父親 受託者=子
所有者・・・取引法上=子 税法上=父親
課税関係・・・取引法上の所有権は子に移転するが、税法上の所有者は父親のまま ☞ 〇贈与税の課税はなし 〇賃貸収入の不動産所得は父親が申告
【事例2】父親名義の賃貸不動産を妻に委託し、賃貸不動産からの利益は子がうけとる場合。
関係性・・・委託者=父親 受託者=妻 受益者=子
所有者・・・取引法上=妻 税法上=子
課税関係・・・所有権が父親から子へ移転した ☞ 子が受贈者 〇贈与税の申告要検討 〇賃貸収入の不動産所得は子が申告
このように、取引法上の関係なのか、税法上の関係なのかというを念頭に整理すると分かりやすくなります。
※記事の内容は更新日現在の法令にもとづいて作成しています。実際の申告書作成等にあたっての、特例適用などにつきましてはよくよくご確認、ご検討をお願いいたします。