生命保険金の課税関係まとめ 保険料の負担者、契約者、被保険者、受取人による課税関係をケース別に整理
生命保険契約にかかわる課税は、誰が保険料を負担していたか、受取人は誰かなどによって変化します。
この記事では、保険契約の保険料の負担者、契約者、被保険者、受取人のケース別に課税関係の確認ができます。
☞ 相続税が2割増しに~孫を生命保険の受取人にしているケース
☞ 満期保険金の贈与税課税 生命保険料を贈与していたと言ってもダメなの?
☞ 税務相談カテゴリー 相続税節税策
☞ 国税庁ホームページ 「死亡保険金を受け取ったとき」
Table of Contents
生命保険金の非課税枠について(相続放棄している人がいたら)
本来、生命保険金、死亡に伴う損害保険金は受取人固有の財産なのですが、経済的実質の観点から、次に該当するものは、相続税法により被相続人の相続財産とみなされてしまいます。
- 被相続人の死亡を原因として支払われる保険金であること
- 被相続人が保険料を負担していたこと(被相続人が契約者かどうかは問わない)
これに該当する死亡保険金については、本来の相続財産ではない「みなし財産」ため、相続税課税上、非課税の枠が設けられています。
法定相続人の数 × 500万円 = 生命保険金の非課税部分
法定相続人の中に正式に相続放棄をしている(家庭裁判所へ相続放棄の申述をしている)方がいる場合、相続放棄をした方については、非課税の恩恵は受けられません。
その場合でも、法定相続人の数には変わりがないものとして計算しますので、非課税部分の金額は同額で非課税の恩恵は相続放棄をしなかった相続人が受けられることとなります。
注意※ 死亡生命保険金=年金受給権とは異なります。
この記事の死亡生命保険金は、被相続人が保険会社と交わしていた「年金を受け取る契約にかかる権利」とは異なります。「年金を受け取る契約にかかる権利」は、生命保険金の非課税の対象ではありません。
【事例】
父親が死亡し、相続人は長男と長女の2名で、長女は相続放棄を家庭裁判所へ申述している。
父親の死亡を原因とする生命保険金(保険料負担は父親)を長男が1500万円、長女が500万円受け取っている。
長男が相続したとみなされる生命保険金=1500万円-(500万円×2名)=500万円
長女が相続したとみなされる生命保険金=500万円-(0万円)=500万円
生命保険契約の課税関係(基本)
生命保険契約のパターンごとの課税関係は後述のとおりですが、つぎのことを頭に置いておくと理解しやすいです。
ポイントは保険料を出したの誰か(保険料負担者)と 保険金を受取ったのは誰か(保険金受取人) と 保険料がおりる原因(保険事故内容)です。
〇保険料を出した人自身が保険金を受取った ☞ 所得税(一時所得)課税
〇保険料を出した人が死んだことにより保険金を受取った ☞ 相続税課税
〇保険料を出した人は健在だが、保険金を受け取った ☞ 贈与税課税
生命保険契約のパターンごとの課税関係(一覧表)
生命保険金、生命保険の権利を取得した場合の課税関係の類型をまとめるとつぎのようになります。
契約者 | 被保険者 | 保険料負担者 | 保険金受取人 | 保険事故 | 課税関係 |
夫 | 夫 | 夫 | 夫 | ①満期 ②夫死亡 | ①夫の一時所得 ②みなし相続財産 |
夫 | 夫 | 夫 | 妻 | ①満期 ②夫死亡 | ①夫から妻へみなし贈与 ②みなし相続財産 |
妻 | 妻 | 夫 | 妻/夫 | ①満期 ②妻死亡 | ①妻から夫へのみなし贈与 ②夫の一時所得 |
夫 | 夫 | 子 | 妻 | 夫死亡 | 子から妻へみなし贈与 |
妻 | 妻 | 夫 | 妻 | 夫死亡 | 妻が「生命保険の権利」を相続したとみなされる |
夫 | 妻 | 夫 | 妻 | 夫死亡 | 妻と子が相続(遺贈)により権利を取得する |
夫 | 夫 | 夫 | 妻 | 妻死亡 | 課税関係なし |
夫 | 妻 | 妻 | 夫 | 夫死亡 | 課税しない |
〇一時所得はその年分(暦年)の他の総合課税所得(給与所得、雑所得など)と合算して、所得税及び復興特別所得税の確定申告をすることとなります。
〇みなし相続財産は他の相続財産とともに相続税の申告財産に含める必要があります。
かんぽ生命の「特約還付金」について
かんぽ生命の簡易保険は基本的には終身の積立保険です。
保険事故(被保険者の死亡)の発生により、死亡保険金とは別に「特約還付金」という名称の還付金がある場合があります。
これは、「積立(保険料)部分の返還金」ですので、保険契約者自身が積み立てていた貯金と同様のお金です。
したがって、被相続人本来の財産ということですから、上記の「死亡を原因とする生命保険金」ではありませんので、非課税枠の対象外となります。
(クルマの保険)人身傷害保険について
車の任意保険の内の一種です。
受取人が受取った保険金についての課税関係は、保険料の負担者と受取人との関係により、原則として前述の表のとおりとなります。
ただし、受け取った保険金の内に損害賠償としての性質のお金が含まれる場合には、課税の対象とはされません。
損害賠償の性質があるかどうかは、保険会社からの支払保険金の通知書に書かれている場合もありますが、ない場合には、保険会社に確認する必要があります。
保険会社によっては、確認に時間を要する場合もありますから、相続税の申告期限に間に合うように早めに照会することをおすすめします。
☞ 年金受給権について
☞ 税務相談カテゴリー 相続税節税策
☞ 満期保険金の贈与税課税 生命保険料を贈与していたと言ってもダメなの?
※記事の内容は更新日現在の法令にもとづいて作成していますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当事務所では一切の責任を負うことはできませんのでご了承ください。
【相続税専門】岡田隆行税理士事務所 ℡087-816-8889
国税局・税務署での32年間の資産税事務経験を活かして、相続税に関するサポートに尽力します。
事務所は高松市国分寺町、趣味は料理とバイクです。