家族信託ってなんですか?~同族株式の贈与、後継者が早世した際のの家族の問題、その時の相続税は?
長男に会社を引き継ぎたいけど、長男の嫁とはうまくいっていない社長さんが相談にみえました。
現経営者S氏(以下S氏)「先生、ワシからせがれへ会社の経営を引き継ぐので、会社の株を贈与するのはいいのだが、もし長男が先に亡くなるようなことがあったらどうしましょうか。」
関与税理士I先生(以下I先生)「ご長男が亡くなったら、会社の株がご長男のおくさんと子どもさんに相続されてしまいますものね。」
S氏「そうなんですよ。あいにく長男の嫁とはわたしも家内もあまりうまくいっていないものですから・・・」
I先生「では、家族信託を利用してみてはどうでしょうか?」
事業承継に家族信託を活用する
S氏からその長男へ事業が引き継がれるのはいいのですが、長男が早世してしまった場合、会社の株式は長男の相続人である長男の妻や孫へ相続されてしまいます。(早世しなくとも、株式を贈与してそのままの場合にはそうなってしまいます。)
S氏としては長男がもし早世したときには、次男に会社をまかせたいと考えていますが、長男にそういった内容の遺言を書かせるのは至難の業です。そもそも長男の嫁がそれを許さないでしょう。
そこで登場するのが家族信託です。
信託を利用すれば、先代経営者の思いを実現することが可能です。手順はつぎのとおりです。
- S氏から長男へ株式を贈与する
- 長男からS氏へ株式を信託させる(長男:委託者・受益者、先代経営者:受託者)
- S氏に受益者指定権等を設定する
このことにより、つぎのことが可能となります。
- 株式の議決権行使はS氏がおこなえる
- 配当金はS氏が受取り、収益の分配割合はS氏が判断します
- S氏は受益者の変更ができます
さらなる対策として、長男がS氏よりも先に亡くなった場合には、次の受益者を次男などS氏の任意の者に指定しておくことです。そうすることによって、長男の妻が受益権を相続することにはならずに、次男等が長男の受益者としての地位を引き継ぎます。
長男の相続税の課税は?
S氏「なるほど、家族信託でそこまでできるのですね・・ところで、長男が亡くなった場合の相続税の課税はどうなるのですか?」
長男が亡くなった際の受益権は次男等(信託契約の定めた者)にこの場合では遺贈されることとなります。したがって長男の相続税の申告書を提出する場合にはその受益権の遺贈を受けた受遺者として、相続税の計算に含めることとなります。
長男の受益権以外の財産は、長男の法定相続人が遺産分割協議などによって分割することとなります。それに加えて次男等が遺贈を受ける受益権を含めて相続税の計算をする必要があるということです。
※記事の内容は更新日現在の法令にもとづいて作成しています。実際の申告書作成等にあたっての、特例適用などにつきましてはよくご確認、ご検討をお願いいたします。