相続税の債務控除 お義父さんの生活費は債務控除の対象となるか

相続税は亡くなられた方のプラスの財産と、マイナスの財産(お葬式の費用も含みます)
の差額が相続税の基礎控除額を超えると、税務署に申告書を提出しなければなりません。

tori


マイナスの財産の例

マイナスの財産は、例えば以下のようなものが挙げられます。
・借入金
・亡くなられた後に支払った亡くなられた方の税金
・亡くなられた後に支払った亡くなられた方の入院費
・相続人が立替えていたお金(未払金)

ポイントとしては相続開始時点において確実に存在していなければ、債務控除はできません。
例えば亡くなられた方が、どなたかの借金の保証人になっていたようなケース。

相続人は亡くなられた方の保証人の立場を相続することとなりますが、
未だ保障をする理由が発生していない場合には確実な債務とはいえないことから、
債務控除の対象とはなりません。

それから、お墓などの霊びょう祭具などの未払金については、
それらがプラス財産にはならない非課税財産であることの裏返しで、
債務控除の対象にはなりません。

マイナス財産が税務調査の対象とされた実例

債務控除額が大きすぎるという理由から、相続税調査の対象とされる場合があります。

プラス財産の預貯金が数千万円、
マイナス財産として被相続人の未払金が数千万円計上されているというケースでした。

その未払金の債権者は被相続人と養子縁組している長女の夫・・・。
こんな場合、100%調査対象とされます。
確実な債務かどうか確認する必要があるためです。

実際に調査に伺い、お話を聞いてみると、
亡くなられたお義父さんが相当の節約家?で、
自らの生活費一切を養子の自分が負担していたというのです。

養子さん曰く
「家内と結婚してから数十年間、私が義父の生活費を支払っていたから、
多額の義父名義の預金が残っているのです。
その預金に税金がかかるというのは理不尽過ぎます!」
というのが養子さんの主張でした。

どうして金銭的に余裕のあった親の生活費を養子さんが支払っていたのでしょうか。
おそらく支払っていたのは事実で、そこに嘘偽りはないのでしょう。

  • 相続開始の時点において確実な債務”とは言えないこと
  • 親子の間で助け合うことは法律上の義務とされていること
  • 債権者である相続人が、被相続人の債務を承継することにより債務が消滅すること

からお義父さんの債務から外して修正申告書を出してもらいました。

当然の如くもともと支払うべきであった税金以外に、
ペナルティである加算税と利息としての延滞税が余計にかかります。

養子さんからは相当な抵抗がありましたが、そこはどうすることもできません。

そもそも関与している税理士先生が、
税務署が認めないのは確実だからこの未払金は計上するべきでないと説得しておくべき
だったと思うのですが、養子さんのお義父さんに対する強い念には抵抗できなかったのでしょう。

※記事の内容は更新日現在の法令にもとづいて作成しています。
 実際の申告書作成等に際して、特例適用等についてはよくよくご確認、ご検討をお願いいたします。