全部内縁の妻に遺贈します~遺贈を受けた場合の相続税の申告手続き
内縁関係にあった方に、すべての財産を遺贈する内容の遺言があった場合、相続税の申告手続きはどのようにすればよいのでしょうか?
遺言があることを知った日の翌日から10ヶ月以内に相続税の申告書を提出
相談者F家氏「センセイ~こないだ亡くなったうちの伯父さんの話なんやけど。
伯父さんの相続人は嫁さんと長男なんやけど、伯父さんにはだいぶん前から愛人がおっての。
その愛人に財産全部あげますという内容の遺言を残しとったらしいんや。
その伯父さん、昔株で儲けとって1億ぐらい持っとったんやけど、相続税の申告はどうなるん?」
O田税理士「なるほど~愛人さんですか~ そうですね、その愛人さんは遺言により財産を受け継ぐ受遺者となります。ですので、愛人さんが故人様が亡くなった時に、その時点で遺言があることを知っていた場合、その翌日から10ヶ月以内に相続税の申告書を提出しなければいけませんね。」
相談者F家氏「そうな~伯父さんは愛人さんとずっと同居しとったけん、亡くなってから10ヶ月後の命日が申告期限になるいうことやね。」
O田税理士「そうです。愛人さんは相続人ではありませんから、相続税の基礎控除のうち法定相続人数比例部分の適用はありません。それと、相続税の総額を計算する際の法定相続分もありません。さらに、相続税額は2割増し適用となります。」
相談者F家氏「なるほど。そうですか~ ほんで、伯父さんの嫁さんと長男はなにも貰えんの?」
O田税理士「奥さんと長男さんには、遺留分といいまして法定相続分の半分の財産を相続する権利があります。ですので、奥さんも長男さんも四分の一づつの権利がありますので、その割合の財産は裁判に持ち込めば確実に貰えます。」
相談者F家氏「ほんだら、財産の総額の半分は貰えるいうことか。その場合の手続きはどなしたらええんな?」
遺留分の審判のあった日の翌日から10ヶ月以内に相続税の申告
O田税理士「その場合はですね、奥さんと長男さんが、愛人さんに遺留分の請求をして、仮に家庭裁判所の審判で和解したとしたら、審判のあった日の翌日から10ヶ月以内に相続税の申告をする必要があります。遺留分のお金は、いったん愛人さんに行ってしまってますので、お金は愛人さんから受け取ることにはなりますが、相続により受取ったとみなされるということですね。」
相談者F家氏「ほんだら、愛人さんは?貰うた財産から出さないかんけん、財産減ってしまうけど。」
O田税理士「そうですよね。愛人さんは遺留分の支払いが確定して、その分財産が減ってしまいますよね。その場合は、申告した税額が多く誤っていたので税金返してねという意味の、更正の請求という手続きが用意されています。なので、愛人さんは支払うべき金額が確定した日の翌日から4ヶ月以内に相続税の更正の請求書を提出することができます。」
相談者F家氏「なるほどなるほど。よく分かりました。センセイありがとう!」