住宅取得資金贈与のオトクなポイント~非課税なこと
父母又は祖父母など直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用家屋の新築、取得等の対価に充てるための資金の贈与を受けた場合、一定の要件を満たすときは、非課税限度額まで贈与税が非課税となります。
現行法では省エネ住宅で、住宅取得等の契約締結日(消費税率10%の場合)が、2021年4月1日~同年12月31日の非課税限度額は1,200万円とされています。
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”非課税”なので、相続税とは関係なし
相談者H川氏
「先生~、長男が新築する言いよるけんなんぼか出してやろうかと思うとるんや。」
税理士O田
「それは、おめでとうございます!場所はお近くに建てられるのですか?」
相談者H川氏
「おお、ワシが前に住んどった古い家を壊して建て替えるんや。
まだ築20年余りで勿体ないんやけどの。
長男に子供もできたことやし、新しい家の方が電気代もかからんやろ。」
税理士O田
「そうですか~確かに築20数年で壊してしまうのは勿体ないですね。
でも、お孫さんもできて良かったですね。おめでとうございます。」
相談者H川氏
「ほんで相談なんやけど、新築の資金出してやったら贈与税の特例がある言うて聞いたんやけど、どんな感じなん。」
税理士O田
「贈与税の”住宅資金の非課税制度”の特例ですね。
特徴としてはですね”非課税”ですので、相続税に影響しないということです。
つまり、相続税の3年内贈与加算をしなくてよいということです。
ただし、気をつけていただきたいのは、税法上では相続財産に加算する必要はありませんが、
民法上では特別受益になりますので万が一、遺産争いになってしまった場合には
この住宅資金が相続財産に持ち戻される可能性があります。」
相談者H川氏
「まあ、ウチの相続人は嫁さんと長男、長女やけん大丈夫やろ。
他に何か注意せないかんこととかあるんな?」
税理士O田
「はい、それはですね・・・
期限内申告書の提出は必須
・・・特例でも色々ありまして、”やむを得ない事情”がある場合は期限後申告でも特例を認めますという規定のものがあります。
ですが、この住宅資金の非課税の特例はその規定がありませんので、天変地異でもない限り期限後申告での特例適用は認められません。」
相談者H川氏
「ほお、そうなんや!厳しいのう。」
税理士O田
「それに、この特例は贈与の時期や、住宅の工事請負契約の時期、物件の種類・床面積、住宅完成の時期、居住開始の時期
など要件が細かく規定されており、要件から外れると特例が受けられない事態になりますのでその点もご注意ください。
それからあくまでも、贈与税の申告ですので、申告は実際に贈与があった年分の申告をしなくてはいけないことを忘れたら大変です。」
申告は贈与を受けた年分にすること
「例えば、令和3年中に贈与を受けた、つまり親から子に現金を渡した、もしくは親から子の銀行口座に振込をした場合は、令和3年分の贈与税の申告をしなければならないと言うことです。お家の完成が令和4年だからといっても、令和4年分の申告にはならないことにご注意ください。」
資金移動の証拠書類の提出・提示は不要
住宅取得資金のご相談で「贈与を受けたときの預金通帳などのコピーは必要ですか?」というお問い合わせがよくあります。
資金移動の際の証拠書類は必要ありません。いつ、誰から、いくら贈与を受けたかについて、贈与税の申告書に記載するだけです。
いつ贈与があったかはどう判断すればよいのでしょうか。
口約束で「このお金をあなたにあげます。」「分かりました。いただきます。」とあげる人と、もらう人の合意があった時点で贈与契約は成立します。ですから、その合意の日を贈与の日としても問題はありません。
ただ、口約束つまり書面によらない契約は、実際にお金が動く前なら、「やっぱり、あげるのやめます。」と撤回することが可能です。なので、実際に現金を渡した日もしくは、資金を銀行口座に振り込んだ日を贈与の日としたほうがよいと思います。