「香典返し」費用と「会葬御礼」費用との相違 相続財産から差し引ける葬式費用について

【事例】被相続人の通夜と告別式の際の「会葬御礼費用」が葬儀会社の明細書に「返礼費用」とされていました。この「返礼費用」について相続税の税務調査の際に「香典返しの費用は葬儀費用には含まれない」旨の指摘を受けています。「会葬御礼費用」は葬儀費用として相続税から控除できないのでしょうか。

被相続人が亡くなった際の葬儀費用は、被相続人の相続開始時点における確実な債務ではありませんから、債務として控除することはできません。ただし、被相続人の死亡により執り行われる一連の葬祭儀式は、死者を弔うために広く一般的に行われているものであり、相続開始によって必然的に生じるものです。このため、相続税法ではこれに係る費用については債務控除の対象としています。

「会葬御礼費用」は「葬式の前後に生じた費用で通常葬式にかかせない費用」にあたりますので葬式費用として控除することができます。

税務調査の担当官はこの「会葬御礼」と「香典返し」とを混同してしまっているものと思われます。

☞ 相続税で控除できる債務・葬式費用等 まとめページ

☞ 相続税の債務控除 お義父さんの生活費は債務控除の対象となるか

☞ 相続税の債務控除できるのは制限が ~ 妹がうけとった生命保険金

☞ 「相続税の申告等についてのご案内・お知らせ」が税務署から届いた際の対応方法ポイントを解説

AXIS85_jinjyanokane
PAKUTASO

☞ 相続税専門 岡田隆行税理士事務所

「会葬御礼」と「香典返し」

会葬御礼

お通夜や告別式にお集まりいただいた方々へ、故人の弔いのためにわざわざ参列いただいたことに対する感謝の気持ちを表すのが「会葬御礼」です。

香典返し

香典返しは通夜や告別式の時に限らず、いただいたご香典の内容(供物、お花、金銭)によって相応のお返しをするものです。

四十九日(満中陰)を終えてからお返しをしますので、香典返し費用は四十九日より後に発生するのが一般的です。

葬式費用となるものとならないもの

葬式費用となるもの

葬式費用となるものとして、国税庁のHPにつぎのものが列挙されています。

  1. 葬式や告別式に際し、またはこれらの前において、火葬や埋葬、納骨をするためにかかった費用
    (仮葬式と本葬式を行ったときにはその両方にかかった費用が認められます。)
  2. 遺体や遺骨の回送にかかった費
  3. 葬式の前後に生じた費用で通常葬式にかかせない費用
    (例えば、お通夜などにかかった費用がこれにあたります。)
  4. 葬式に際してお寺などに対して読経料などのお礼をした費用
  5. 死体の捜索または死体や遺骨の運搬にかかった費用
  6. 納骨に要した費用

葬式費用とならないもの

  1. 香典返しのためにかかった費用
  2. 墓石や墓地の買入れのためにかかった費用や墓地を借りるためにかかった費用
  3. 初七日や法事などのためにかかった費用

まとめ

告別式の葬儀費用として支払われる会葬礼状、会葬御礼品代金は「社会通念上葬儀に際して必要な費用」であり葬儀費用の一部として相続税の課税財産から控除できる金額となります。

納骨にかかった費用

宗教や地域的習慣にもよりますが、一般的に納骨の時期は四十九日の法要・法事の後に行われることが多いようです。

一般的にと言うように、いつしなければならないと決まっているものではありません。

相続税から控除できる葬式費用として、「納骨をするためにかかった費用」はその対象となることが通達に明示されています。

ただし、葬式費用として控除できるのはお墓などに納骨するそのものの費用に限られます。

納骨するそのものの費用とは、どういったものでしょうか。考えられるのは、遺骨をお墓に収めるために墓石を移動させるために費用が掛かる場合が考えられます。

納骨が法要・法事などにあわせて行われた場合、その法要・法事に関連する費用(寺院へのお布施、お車代、お前代、会食費用)については、控除の対象外となりますので、区分する必要があります。

根拠法令

相法13、相基通13-4、13-5

kaosyashinP9250283

【相続税専門】税理士 岡田隆行

国税局・税務署での32年間の資産税(相続税・贈与税)事務の経験を活かし、相続税に関する困りごとの解消に尽力します。

事務所は高松市国分寺町、趣味は料理とバイクです。

☞ 相続税専門 岡田隆行税理士事務所