JA農協の建物更生共済契約(たてこう) 課税取扱いの注意点 課税関係を類型別に解説
建物更生共済(建更・たてこう)とはJA(農業協同組合)が販売している損害共済商品です。
この記事では建更の共済契約者、被共済者、共済掛金負担者によって課税関係がどうなるか確認できます。
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建物更生共済(建更・たてこう)とは
建物更生共済(建更・たてこう)とはJA(農業協同組合)が販売している損害共済商品です。
損害保険商品は掛捨てのものが多いのですが、建更は 掛捨て部分 と 積立て部分 があることが特徴です。
この特徴があることから建更については一般的な生命保険などとは異なった取り扱いをする必要があります。
この記事では契約者、共済掛金負担者、被共済者、共済金受取人 の類型ごとに課税関係を解説しています。
建更では共済の対象となる建物所有者を被共済者と言います。
☞ 「相続税の申告等についてのご案内・お知らせ」が税務署から届いた際の対応方法ポイントを解説
☞ 生命保険契約と建物更正共済契約などの損害保険契約の掛金負担 保険事故が未発生 贈与税課税の判断
☞ 生命保険金の課税関係をまとめたページは こちら です。
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《事例》被相続人の家に、被相続人が共済を掛けていた
契約者 | 被相続人 甲 |
掛金負担者 | 被相続人 甲 |
建物所有者(被共済者) | 被相続人 甲 |
相続税の取り扱い
これがもっとも一般的で、契約者、掛金負担者、建物所有者(被共済者)すべてが被相続人だった場合です。
共済契約のうち積立金の部分は解約すれば返金されますので、死亡時点の「解約返戻金相当額」が相続財産となります。
建物更生共済契約 | 死亡時点の「解約返戻金相当額」が相続財産 (甲の本来財産) |
《事例》被相続人の家に、相続人が共済を掛けていた
契約者 | 相続人 乙 |
掛金負担者 | 相続人 乙 |
建物所有者(被共済者) | 被相続人 甲 |
相続税の取り扱い
この場合には、被相続人甲の相続財産となるとなるものはありません。
建物更生共済契約 | 相続財産となるものなし |
《事例》相続人の家に被相続人が共済を掛けていた
契約者 | 被相続人 甲 |
掛金負担者 | 被相続人 甲 |
建物所有者(被共済者) | 相続人 乙 |
相続税の取り扱い
死亡時点の「解約返戻金相当額」が被相続人の相続財産に加算されます。
建物更生共済契約 | 死亡時点の「解約返戻金相当額」が相続財産 (甲の本来財産) |
《事例》共済掛金の負担者が被相続人だった
契約者 | 相続人 乙 |
掛金負担者 | 被相続人 甲 |
建物所有者(被共済者) | 相続人 乙 |
相続税の取り扱い
このパターンで甲が相続開始した場合、生命保険契約であれば「生命保険契約に関する権利」が保険料負担者の財産であるとして相続開始時点での解約返戻金相当額で課税されます。
この「生命保険契約に関する権利」に課税される根拠としては、相続税法により相続(または遺贈)により取得したものとみなされるからです。
相続税法3条1項3号
相続開始の時において、まだ保険事故(共済事故を含む。以下同じ。)が発生していない生命保険契約(一定期間内に保険事故が発生しなかつた場合において返還金その他これに準ずるものの支払がない生命保険契約を除く。)で被相続人が保険料の全部又は一部を負担し、かつ、被相続人以外の者が当該生命保険契約の契約者であるものがある場合においては、当該生命保険契約の契約者について、当該契約に関する権利のうち被相続人が負担した保険料の金額の当該契約に係る保険料で当該相続開始の時までに払い込まれたものの全額に対する割合に相当する部分
この「保険事故が発生していない生命保険契約」には損害保険契約である建更は含まれないことから、相続により取得したものとみなされないという結果になるのです。ではどう課税されるのか・・・
「相続開始以前3年間(順次7年間まで延長)の掛金相当額について相続人への贈与」 として相続財産に加算することとなります。
建物更生共済契約 | 相続開始前3年(~7年)以内の共済掛金額 を相続財産に 贈与加算 |
生命保険契約 | 相続開始時点の解約返戻金相当額を相続財産に加算 (甲のみなし相続財産) |
被相続人が保険料を負担していることは事実なのに、「被相続人が契約者になっていないこと」ただそれだけのことで相続税の課税価格が大きく変化してしまうこととなります。
そこで実務上では、この建更の共済契約を名義財産として捉えれば、相続人はただの名義人であり実質は被相続人が契約者だったということになれば、被相続人の財産として、解約返戻金相当額で相続財産に加算するという選択もあると考えられます。
これは、相続税の当初の申告書を提出する段階において、名義財産と判断して申告することも考えられますし、相続税の税務調査の際に調査官から指摘を受ける可能性もあるということです。
【別の視点から】
掛金の負担者と契約者が別人の場合
建物更生共済契約の掛金はその掛金を出した都度、負担者から契約者へ贈与があったこととなる。
これは、掛金が一時払いで110万円を超えていれば契約者には贈与税の申告義務が発生する可能性があるということです。
(生命保険契約は掛金を出した都度の課税関係は発生せず、保険事故発生の際に(みなし)課税される。)
《事例》契約者(掛金負担者)と共済金受取人が別人だった
契約者・掛け金負担者と満期共済金受取人が異なるパターンです。
契約者 | 甲 |
掛金負担者 | 甲 |
建物所有者(被共済者) | 甲 |
満期共済金受取人 | 乙 |
贈与税・所得税の取り扱い
このパターンで受取人も甲だった場合には、満期共済受取人甲の所得税(一時所得)として課税されます。
このパターンで満期を迎えた場合、生命保険(共済)契約であればどう課税されるでしょうか。
満期共済金が、掛金負担者である甲から満期共済金受取人の乙へ贈与により取得したものとみなされて贈与税の課税対象となります。相続税法5条2項に贈与により取得とみなしますと書かれているのです。
ところが、契約者と満期共済金の受取人が異なる場合の建更の満期共済金については、相続税法5条2項の「傷害を保険事故とする損害保険契約」ではないことから、贈与税とみなす規定が適用されないことになります。
贈与とみなす規定が適用されない結果、建更の場合には共済金受取人の所得税(一時所得)として課税されます。
一時所得として課税される場合の必要経費には共済掛金を計上します。これについて共済受取人以外が負担した掛金の額でも、必要経費として計上することができます。
なんだか実質とかけ離れた課税と言わざるを得ませんが、みなす規定の網の目から漏れてしまっている以上贈与税は課税されないという取り扱いとなります。
贈与税が課税されないことを意識して、建更の共済満期金額の実質的な贈与が行われていたとしても、課税当局としては手が出せないということとなるのです。
建物更生共済契約 | 受取人の所得税(一時所得)として課税(掛金は必要経費として控除可) |
生命保険契約 | 受取人に贈与税課税 (みなし贈与 贈与税課税) |
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【相続税専門】税理士 岡田隆行
国税局・税務署での32年間の資産税(相続税・贈与税)事務の経験を活かし、相続税に関する困りごとの解消に尽力します。
事務所は高松市国分寺町、趣味は料理とバイクです。
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相続税法5条 贈与により取得したものとみなす場合
1 生命保険契約の保険事故(傷害、疾病その他これらに類する保険事故で死亡を伴わないものを除く。)又は損害保険契約の保険事故(偶然な事故に基因する保険事故で死亡を伴うものに限る。)が発生した場合において、これらの契約に係る保険料の全部又は一部が保険金受取人以外の者によつて負担されたものであるときは、これらの保険事故が発生した時において、保険金受取人が、その取得した保険金(当該損害保険契約の保険金については、政令で定めるものに限る。)のうち当該保険金受取人以外の者が負担した保険料の金額のこれらの契約に係る保険料でこれらの保険事故が発生した時までに払い込まれたものの全額に対する割合に相当する部分を当該保険料を負担した者から贈与により取得したものとみなす。
2 前項の規定は、生命保険契約又は損害保険契約(傷害を保険事故とする損害保険契約で政令で定めるものに限る。)について返還金その他これに準ずるものの取得があつた場合について準用する。
所得税法施行令184条(損害保険契約等に基づく年金に係る雑所得の金額の計算上控除する保険料等)
2 損害保険契約等(前項に規定する損害保険契約等及び保険業法第二条第十八項(定義)に規定する少額短期保険業者の締結した同条第四項に規定する損害保険会社又は同条第九項に規定する外国損害保険会社等の締結した保険契約(第四項において「損害保険契約」という。)に類する保険契約をいう。以下この項及び次項において同じ。)に基づく満期返戻金等の支払を受ける居住者のその支払を受ける年分の当該満期返戻金等に係る一時所得の金額の計算については、次に定めるところによる。
一 当該満期返戻金等の支払の基礎となる損害保険契約等に基づき分配を受ける剰余金又は割戻しを受ける割戻金の額で、当該満期返戻金等とともに又は当該満期返戻金等の支払を受けた後に支払を受けるものは、その年分の一時所得に係る総収入金額に算入する。
二 当該損害保険契約等に係る保険料又は掛金の総額は、その年分の一時所得の金額の計算上、支出した金額に算入する。
4 前二項に規定する満期返戻金等とは、次に掲げるものをいう。
二 法第七十七条第二項第二号に掲げる契約又は法第二百七条第三号に掲げる契約で損害保険契約以外のもののうち建物又は動産の共済期間中の耐存を共済事故とする共済に係る契約に基づき支払を受ける共済金(当該建物又は動産の耐存中に当該期間が満了したことによるものに限る。)及び解約返戻金
※記事の内容は更新日現在の法令にもとづいて作成しています。実際の申告書作成等にあたっての、特例適用などにつきましてはご確認、ご検討をお願いいたします。