自分が掛金を支払っていなくても差引くことができます 建物更生共済の満期共済金 一時所得の計算
一時所得の計算上、自分が掛金を負担していなくても収入から差引けることがあります。

農協の損害共済商品である建物更生共済(建更・たてこう)の満期返戻金を受け取った場合には、契約者(掛金を負担した人)と受取人の関係にかかわらず所得税/住民税の一時所得の対象となります。
その一時所得の計算の上において、満期共済金の受取人以外の人が負担した共済掛金についても差引くことができます。
☞ JA農協の建物更生共済契約(たてこう)課税取扱いの注意点 課税関係を類型別に解説
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自分が支払っていない掛金も差引くことができる

たとえば、建物更生共済の契約者(掛金の負担者)が父親、満期共済金の受取人が長男だった場合、長男が受取った満期共済金は所得税/住民税の対象となります。
その長男の一時所得の計算上、満期保険金額から父親が負担した掛金を差引くことができます。
満期保険金額 ― (父親が負担した)共済掛金額 ― 特別控除(50万円) = 一時所得の金額
なぜ父親が負担した共済掛金まで差引くことができるのでしょうか。
それは所得税法の基本通達により、「満期共済金の受取人以外の者が負担した共済掛金であっても、贈与などにより取得したとみなされる満期共済金をのぞき、すべて一時所得の収入を得るために支出した金額を含めてよい」とされているからです。
(生命保険契約等に基づく一時金又は損害保険契約等に基づく満期返戻金等に係る所得金額の計算上控除する保険料等)
所得税基本通達34-4 令第183条第2項第2号又は第184条第2項第2号に規定する保険料又は掛金の総額(令第183条第4項又は第184条第3項の規定の適用後のもの。)には、以下の保険料又は掛金の額が含まれる。(平11課所4-1、平24課個2-11、課審4-8改正)
(1) その一時金又は満期返戻金等の支払を受ける者が自ら支出した保険料又は掛金
(2) 当該支払を受ける者以外の者が支出した保険料又は掛金であって、当該支払を受ける者が自ら負担して支出したものと認められるもの
(注)
- 1 使用者が支出した保険料又は掛金で36―32により給与等として課税されなかったものの額は、上記(2)に含まれる。
- 2 相続税法の規定により相続、遺贈又は贈与により取得したものとみなされる一時金又は満期返戻金等に係る部分の金額は、上記(2)に含まれない。
建物更生共済の契約のしくみ(契約約款)
建物更生共済の契約に関連する者はつぎのとおりです。
共済契約者
共済の目的となる建物の所有者に限られず、その親族、管理者でも可。
被共済者
共済の目的である建物の所有者に限られる。(共有者でも可能ということ)
満期共済受取人
共済契約者、被共済者のいずれかを指定。
みなし贈与税課税の対象外
共済契約者(通常は共済掛金を負担する者)と満期共済受取人が異なる場合には、実質的に贈与となり贈与税の課税されるのではないかと考えるのが常識的な考え方です。
ところが、建物更生共済では実質的な贈与として課税される「みなし贈与」の網の目から逃れているため贈与税の課税対象とはなりません。
生命保険契約の場合には、保険料を負担した人と満期保険金を受取った人とが別人だった場合には、贈与があったものとみなされてしまいます。
損害保険契約である建更にはこのみなし贈与に規定に触れません。その結果、一時所得の対象となるのです。
一時所得の計算
一時所得の計算は、その年の一時所得の収入金額から「その収入を得るために支出した金額」の合計額を控除し、特別控除の額(50万円)を控除した金額です。
収入金額
― その収入を得るために支出した金額
― 特別控除50万円
= 一時所得の所得金額
一時所得の所得金額 × 0.5 = 課税の対象額
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【相続税専門】税理士 岡田隆行
国税局・税務署での32年間の資産税(相続税・贈与税)事務の経験を活かし、相続税に関する困りごとの解消に尽力します。
事務所は高松市国分寺町、趣味は料理とバイクです。