贈与税課税されるか分岐点 生命保険契約と損害保険契約の掛金負担

生命保険契約と建物更正共済契約などの損害保険契約とでは、課税関係が異なることがあります。

そのひとつが、保険(共済)掛金負担者と保険(共済)契約者とが異なる場合です。

たとえば、契約者が息子になっている保険(共済)契約の掛金を、父親が負担しているという場合です。

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☞ 生命保険金の課税関係をまとめたページは こちら です。

☞ 毎年同じ額の現金贈与をしていると税務調査が来ないか心配

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保険事故が発生していない場合の課税

〈事例〉

保険(共済)契約者相続人 息子
保険料(共済掛金)負担者被相続人 父親
被保険者(被共済者)相続人 息子

生保契約では

この事例で保険事故(被保険者の死亡または満期)の発生以前において父親が死亡した場合、「生命保険契約に関する権利」が保険料負担者の父親の財産であるとして相続開始時点での解約返戻金相当額で課税されます。

財産取得者は保険(共済)契約者である息子となります。

この「生命保険契約に関する権利」に課税される根拠としては、相続税法により相続(または遺贈)により取得したものとみなされる(みなし相続財産)からです。

損保契約では

一方、建更などの損害保険契約については「保険事故が発生していない生命保険契約」には含まれないことから、相続により取得したものとはみなさないという結果となります。

「相続開始以前3年間(令和6年以降順次7年に延長)の掛金相当額について相続人への贈与」 として相続財産に加算することとなります。

〈課税関係の比較〉

建物更生共済契約 相続開始前3年(令和6年以降順次7年に延長)以内の共済掛金額 を相続財産に 暦年贈与加算
生命保険契約 相続開始時点の解約返戻金相当額を相続財産に加算 (甲のみなし相続財産)

被相続人が保険料を負担しているという事実は同じでも、「被相続人が契約者になっていないこと」で相続税の課税価格が大きく変化してしまうこととなります。

実務の上での考え方

そこで実務上では、この建更の共済契約を名義財産として捉えれば、相続人はただの名義人であり実質は被相続人が契約者だったと認められれば、被相続人の財産として、解約返戻金相当額を相続財産に加算するという選択もあると考えられます。

これは、相続税の当初の申告書を提出する段階において、名義財産と判断して申告することも考えられますし、相続税の税務調査の際に調査官から指摘を受ける可能性もあるということです。

【別の視点から】掛金支出時の課税

掛金の負担者と契約者が別人の場合
建物更生共済契約などの損害保険契約の掛金はその掛金を支出した都度、負担者から契約者へ贈与があったこととなるということになります。
つまり、年間の掛金が110万円を超えていれば契約者(受贈者)には贈与税の申告義務が発生するということです。
※生命保険契約は掛金を支出した都度の課税関係は発生せず、保険事故発生の際に(みなし)課税される。

相続税法3条1項3号
相続開始の時において、まだ保険事故(共済事故を含む。以下同じ。)が発生していない生命保険契約(一定期間内に保険事故が発生しなかつた場合において返還金その他これに準ずるものの支払がない生命保険契約を除く。)で被相続人が保険料の全部又は一部を負担し、かつ、被相続人以外の者が当該生命保険契約の契約者であるものがある場合においては、当該生命保険契約の契約者について、当該契約に関する権利のうち被相続人が負担した保険料の金額の当該契約に係る保険料で当該相続開始の時までに払い込まれたものの全額に対する割合に相当する部分

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【相続税専門】税理士 岡田隆行

国税局・税務署での32年間の資産税(相続税・贈与税)事務の経験を活かし、相続税に関する困りごとの解消に尽力します。

事務所は高松市国分寺町、趣味は料理とバイクです。

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